自動車保険の等級制度とは — 事故で保険を使うと保険料はいくら上がる?

自動車保険の保険料を最も大きく左右するのが「等級(ノンフリート等級)」です。仕組みを知らないまま小さな修理で保険を使うと、受け取った保険金より翌年以降の保険料の値上がりのほうが大きかった — ということが起こりえます。この記事では等級制度の仕組みと、「保険を使うか自腹か」の判断の考え方を解説します。
ノンフリート等級制度の基本
個人契約の自動車保険(所有・使用する車が9台以下の契約)には、1〜20の等級が設定されています。
- 新規契約は原則6等級からスタート(2台目以降の車は、条件を満たすと「セカンドカー割引」で7等級から始められます)
- 1年間保険を使わなければ、翌年度に1等級上がる — 毎年着実に上がり、最大の20等級に近づくほど割引率が大きくなります
- 事故で保険を使うと等級が下がる — 下がり方は事故の種類で異なります(次章)
- 等級が高いほど割引率が大きく、20等級では6割前後の割引になるのが一般的です。逆に1〜5等級は割引が小さいか割増になります
具体的な割引率(係数)は保険会社・改定時期によって異なるため、自分の契約の数値は保険証券や各社の説明資料で確認してください。
事故で保険を使うとどうなる?3つの区分
保険を使ったときの等級への影響は、事故の内容で3つに分かれます。
| 区分 | 主な例 | 等級 | 事故有係数適用期間 |
|---|---|---|---|
| 3等級ダウン事故 | 他人にぶつけた(対人・対物)、自損事故で車両保険を使った など | 3つ下がる | +3年 |
| 1等級ダウン事故 | 飛び石・落書き・盗難・台風・洪水など、車両保険のみの請求(相手のいない偶発的な損害) | 1つ下がる | +1年 |
| ノーカウント事故 | 人身傷害・搭乗者傷害・弁護士費用特約・個人賠償特約などのみの請求 | 下がらない | 加算なし |
どの請求がどの区分になるかは各社の約款で決まっています。請求前に保険会社へ「等級への影響」を確認するのが確実です。
「事故有係数適用期間」— 同じ等級でも割引率が違う
この制度の分かりにくいポイントが、7〜20等級には「無事故」と「事故有」の2種類の割引率があることです。
- 事故で保険を使って等級が下がると、下がった後の一定期間(3等級ダウン事故なら3年、1等級ダウン事故なら1年。最大6年)は「事故有」の低い割引率が適用されます
- たとえば同じ14等級でも、無事故で上がってきた人と、事故で17等級から下がってきた人では保険料が違います
- 期間が明ければ同じ等級の「無事故」の割引率に戻ります
つまり3等級ダウン事故の保険料への影響は「3等級×約3年分」に及びます。ここが「保険を使うと損になりうる」理由の核心です。
保険を使うか、自腹で直すかの判断
修理費が小さい場合は、次の2つを比較します。
- 保険で受け取れる金額(修理費 − 免責金額)
- 今後3年間の保険料の増加分(等級ダウン+事故有係数の影響の合計)
増加分の正確な金額は契約条件によって大きく変わりますが、多くの保険会社は「使った場合・使わなかった場合」の保険料試算を出してくれます。修理費が数万円程度のときは、試算を見てから請求するかどうかを決めるのが賢明です。なお、いったん保険を使う連絡をしても、支払い前なら請求を取り下げられるのが一般的です。車両保険そのものを付けるか・外すかの考え方は車両保険は必要かで解説しています。
等級は引き継がれる — 知っておきたいルール
保険会社を乗り換えても等級は引き継ぎ
等級は保険会社間の情報交換制度で共有されており、乗り換えでリセットはできません。高い等級はそのまま引き継げるので、等級を理由に乗り換えをためらう必要はありません。逆に、事故で下がった等級(1〜5等級のデメリット等級)も他社に引き継がれ、新規契約のふりをしてもいずれ判明します。
家族への引き継ぎ
等級は配偶者や同居の親族に引き継ぐことができます(別居の子には引き継げないのが一般的)。たとえば親の20等級を同居の子に引き継ぎ、親は新規6等級で入り直す — という使い方ができ、家族全体の保険料を抑えられる場合があります。
車を手放すときは「中断証明書」
車を手放して保険をやめるときは、中断証明書を発行してもらうと等級を最長10年間保存でき、再び車に乗るときにその等級で契約を再開できます。発行には条件があるため、解約前に必ず保険会社へ確認してください。
まとめ
等級制度は「無事故なら毎年1つ上がる、使うと3つ下がって約3年は割引率も低くなる」が骨格です。小さな損害では保険料試算と比較してから使うかを決める、車を手放すときは中断証明書を取る — この2点だけで長期的な保険料が大きく変わります。補償内容の選び方は自動車保険の選び方、維持費全体の見直しは維持費の内訳と節約の考え方で解説しています。
※等級の区分・係数・引き継ぎの条件は保険会社や改定時期により異なります。実際の判断の際は、契約中の保険会社の約款・重要事項説明書で必ず確認してください。


